体脂肪計が体に弱い電気を使って違いを見るように、DigiTasteは液体にごく弱い電気をかけて、その戻り方を見ています。4ステップでそのしくみを見てみましょう。
センサーの先には、電気の出入り口になる金属(これを「電極」と呼びます)があります。ここから液体にごく弱い電気の刺激を与えます。
電極にはプラスとマイナスがあります。このプラスとマイナスを、ゆっくり入れ替えたり速く入れ替えたりしながら測ります。
液体の中には、電気に反応して動く小さな粒がいます。たとえば塩が溶けた水には、プラスの粒とマイナスの粒がたくさんいます。プラスの粒はマイナス電極に引き寄せられ、マイナスの粒はプラス電極に引き寄せられます。プラスとマイナスが入れ替わると、粒たちも向きを変えて行ったり来たりします。
醤油(塩分16%)→ 動ける粒がたくさん → 電流がすごく流れやすい
水道水(ミネラル少し)→ 動ける粒が少ない → 電流が流れにくい
STEP 1で、液体にプラスとマイナスをかけました。すると液体の中では、粒が動くだけでなく、もうひとつの反応が起きます。
水の小さなかたまりは、片側がプラス寄り、もう片側がマイナス寄りという偏りを持っています。ちょうど方位磁針(コンパス)のように、電極の向きに合わせてくるっと向きを変えます。
この向きの変わりやすさも、電流の戻り方に影響します。つまり、粒が動く反応だけでなく、水の向きの変わりやすさも測定に表れるのです。
粒が実際に左右に動いて電流を運ぶ
→ 動ける粒が多いほど
電流が流れやすい
水がその場で向きを変えるだけ
→ 向きを変えやすい水が多いほど
電流が流れやすい
酸も糖もタンニンも、どれも水と関わりながら液体の電気的な応答を変えます。ただし、その効き方は同じではありません。成分ごとに、どの影響が強く出やすいかが異なります。
動ける粒としての影響が比較的出やすい。一部が電離してイオンになり、粒の動きに強く影響します。ただし、水のふるまいにも影響します。
水のふるまいへの影響が比較的大きい。水酸基が多く水と強く関わるため、水の動き方や向きの変わりやすさを変えます。下のアニメーションがこの効果を示しています。
さらに複雑な形で影響します。水や他の成分との関わり方が多岐にわたり、粒の道と水の道の両方に影響を与えます。
このように、どの成分も水や粒の動き方に影響しますが、どの影響が強く出やすいかが成分ごとに違います。この違いが、液体ごとの測定結果の差として現れます。
廊下を歩いている人たち(粒や水)がいます。ところが、ものすごく重い荷物(成分)を複数人(水)で持って立っているグループがあちこちにいます。
歩いている人(粒)はそのグループを避けて遠回りするしかありません。荷物を持っている人(成分と結びついた水)は重すぎて向きを変えられない。でも荷物を持っていない人は自由に動けます。
荷物持ちグループが多いほど → 遠回りが増え、向きを変えられる水が減る
液体の違いは、成分そのものの量だけでなく、成分が水とどう関わるかに表れます。どの成分も粒の動きと水のふるまいの両方に影響しますが、その重みづけが成分ごとに異なります。
そのため、「粒が移動する道」と「水が向きを変える道」の組み合わせが液体ごとに変わります。同じくらい甘く、同じくらい酸っぱい液体でも、中に溶けている成分が違えばパターンが違う。これが液体ごとの個性です。
動ける粒が電流を運ぶ道
動ける粒が多い → 電流が流れやすい
成分が粒の移動を妨げる → 電流が流れにくい
水が向きを変えることで電流の戻り方に影響する道
向きを変えやすい水が多い → 電流が流れやすい
動けない水が増える → 電流が流れにくい
この2つの道が横並びになっています。電流は通りやすい方の道を選びます。
醤油のように動ける粒が多い液体では、ほぼ全部が粒の移動する道を通ります。水道水のように動ける粒が少ない液体では、速く入れ替えたときに水が向きを変える道の影響も見えてきます。
ここがポイントです。粒が移動する道と水が向きを変える道では、電流の戻ってくるタイミングがちょっとだけ違います。
2人が同じリズムで手を左右にふっているとします。
1人目(粒が移動する道)は、かけ声にぴったり合わせて動きます。「右!」で右、「左!」で左。完全にそろっています。
2人目(水が向きを変える道)も同じリズムで動いています。でも、よーく見るとほんの少しだけずれていて、1人目がいちばん右に来たとき、2人目はまだ途中にいます。ちょっとリズム感がズレてる子ですね。
この「同じリズムなのに、動きがちょっとだけずれている」ことをタイミングのズレと呼びます(専門用語では「位相のずれ」)。
醤油は粒が移動する道がとても通りやすいので、ほぼ全部がそちらを通ります。→ ズレ=ゼロ
水道水は粒が移動する道が通りにくいので、速く入れ替えたときに水が向きを変える道も使い始めます。すると全体で少しだけズレが見えるようになります。
プラスとマイナスを入れ替える速さを、ゆっくりから速くへ変えながら、2つのことを測ったグラフです:
① 電流の流れにくさ(専門用語でインピーダンス |Z|)→ 醤油は低い(流れやすい)、水道水は高い(流れにくい)
② タイミングのズレ(専門用語で位相 φ)→ 水が向きを変える道を通る割合が大きいほどズレる
ここまで「粒の移動する道と水が向きを変える道の1ペア」で説明しましたが、赤ワインのような複雑な液体を詳しく測ると、このペアが複数重なっていることがわかります。
下の図を見てください。左が実際の測定データ、右がその分解図です:
ポリフェノール周辺の水、有機酸周辺の水、自由に動ける水——それぞれが異なる「水が向きを変える道」を持っていて重なっている。この複雑なパターンこそが、ワインを他の液体と区別する本当の個性です。